“路地中暮らし”初回となる今回は、京都市上京区、近くには賀茂川や児童公園などがある閑静な住宅街の一角、比較的新しい住宅が立ち並ぶ路地にある一軒のお宅に、ジョンさん一家を訪ねました。 出迎えてくださったのは、外国人のご主人と日本人の奥様のご夫婦に5歳の女の子と、大きなワンちゃんが1匹のご家族です。

2020年3月6日 更新

偶然巡り合った「路地」という場所

―― ご出身はどちらですか?
(ご主人) スコットランドで生まれ、イギリスを経て、9歳からカナダに住んでいました。
日本には高校生の時や大学生の時などにも交換留学や研究で来ていて、12年前から本格的に住んでいます。
(奥様) 京都市内の出身で、アメリカや南米のエクアドルで学業や仕事で計3年ほど暮らした後、日本に戻ってきました。

―― こちらへ引っ越してこられた経緯は?
(奥様) 結婚してから京都市内の2ヶ所ほどで暮らしたあと、兵庫県に住んでいましたが、子どもが生まれたタイミングで、(奥様の)親戚や友人が多い京都で家を探し始めました。

―― 路地の中で物件を探しておられたのでしょうか?
(奥様) 特に路地の中の物件を探していたわけではありませんでした。大きな犬もいるので川の近くに住みたい、ある程度新しい家に住みたいなどの希望があり、たまたまこの物件がその条件に合致しました。
(ご主人) ただ、この物件を見学に来た時に、路地の中だと静かですし、車も入ってこなくて安全だと感じました。近所の子どもたちが路地で遊んでいたことも印象に残っていて、子育てにもいい環境だと感じました。

―― 今はこちらにお住まいになって何年目ですか?
(奥様) 5年目です。

偶然のきっかけで路地の中に引っ越してこられたジョンさん一家。
実際に生活を始めてみて、印象はどのように変わったのでしょうか。

新しく移ってきた人も溶け込みやすいコミュニティー

―― 路地の中に引っ越してきた時の第一印象はいかがでしたか?
(奥様) 引っ越してきて1日目に、こちらから挨拶に伺う前に、早速ご近所の方がすごく声をかけてくださり、良いところに来たなと感じました。

―― 路地の中に実際に住んでみて、住む前のイメージとのギャップはありましたか? (奥様) そんなにすぐに馴染めるとは思っていなかったのですが、自分の方からそんなに働きかけなくてもご近所の方からどんどん声をかけてくださり、とてもフレンドリーに接していただけるので、イメージよりもすごく住みやすいと感じました。
 自分たちと同じ世代の方や同じような境遇、自分の子どもと同じような年齢のお子さんがいらっしゃる方などがおられたことも大きかったと思います。

―― 路地の中での人間関係についてはどのように感じていらっしゃいますか?
(奥様) 子供がいるから声をかけてもらいやすいというのもあるとは思います。ただそれを抜きにしても、自分のほうもご近所の方に良くしてもらっているからもっと仲良くなりたいという気持ちもありますし、賃貸よりも持ち家が多く、長くお付き合いをしていく上で、お互い良い人間関係が築けていると思います。
 すごく周りの人に恵まれた良いところに来たねって夫婦でいつも話しています。

地域での豊かな生活と安心感を創り出す路地でのコミュニケーション

―― 路地の中の生活環境はいかがですか?
(奥様) ご近所の方の目があって安全だと感じています。
(ご主人) あと、周りが静かなので、窓を開けても外の音が気にならないですし、夜も過ごしやすいです。
(奥様) 先日遊びに来た友人も静かな環境に驚いていました。

―― 「ご近所の方の目」といいますと?
(奥様) 知らない人が路地を通ったりすると、ご近所の方とお互いに「誰だろう?」って気にしますし、挨拶をしたりするので、知らない人が入ってきにくい安心感があります。

―― この路地にお住まいの方はコミュニケーション能力が高いのでしょうか(笑)? (奥様) それはそうかもしれないですね(笑)。

―― 地域のことについて情報交換もされるのでしょうか?
(奥様) そうですね。どこのお店が美味しいから今度行ってみようとか、どこの病院がいいよとか、そういう話をしてたくさん情報が入ってくるので、地域のことがよくわかります。

屋外で安心して遊べ、子どもが豊かに育つ環境

―― お子様がいらっしゃらなかったら、路地中の物件は選ばなかったのでしょうか?
(奥様) 子どもがいなくても、環境が気に入ったのでこの物件を選んでいたとは思いますが、実際に住んでみて、最初の印象以上に子育てがしやすいとは感じています。

―― お子様にとってはどのような環境だと感じていらっしゃいますか?
(奥様) 子どもが家の外で遊んでいたら、ご近所の方が話しかけてくださったり、遊んでくださったりするので、やはりご近所の方の目があると感じています。
 子どもが大人の方に色々話しかけてもらったり、自転車に乗る練習をしているのをみんなに褒めてもらったりして、大人に対して良いイメージを持っていて、ご近所の大人の方に育ててもらっている感覚があります。親以外にも信頼できる大人が沢山いるということを子どもが感じていて、ここに住んだことは子どもにとってもすごくいい選択だったと思っています。

――特にどういう部分で、子育てしやすいと感じていらっしゃいますか?
(ご主人) ここは前を車が通らないので、外で遊ばせやすくて、家の前ですぐ自転車の練習をしたりすることができます。そのおかげで上達も早くなって、いろんなところに自転車で行くことができるようになったと思います。

―― お知り合いの子育て世代の方が家を探しておられたら、路地の中の物件を勧めますか?
(奥様) 私たちの場合はご近所にお子さんがいる世帯が多いというのが大きかったですし、そういう情報を不動産屋の方も教えてくださっていたので、先にご近所にどういう方がいらっしゃるかという情報を確認することをお勧めしたいです。
 でも基本的に、子育てするには、路地は安全だし良いと思います。


今回、初めて路地の中で生活されている方にお話を伺ってみて、立地的な条件はもちろんですが、ご近所の方同士のコミュニケーションがとても濃密で、それが安全な環境、小さなお子さんでも安心して外で遊べる貴重な環境につながっていると感じました。
子どもが外で元気に遊べるということだけではなく、大人とのコミュニケーションがしっかりとれる子どもが路地で沢山育っていく、そんなイメージを強く抱きました。

 最後に、今回インタビューにご協力いただきましたジョンさんご一家、本当にありがとうございました!

この記事の編集者
南 知明
京都観光おもてなしコンシェルジュ

京都市左京区出身、東山区在住。団地育ち。
京都観光おもてなしコンシェルジュ。
京都市内のホテルで働く傍ら、上京区を中心に
広く地域活動に携わり、まちあるきミニツアー
「まいまい京都」のガイドなども務める。